コラム
世界情勢
2023.10.02
米国債金利のゆくえ
9月のFOMC(連邦公開市場委員会)を終え、ここ最近はまた米国債金利が上がってきております。
今後、この金利はどこまで上がっていくのでしょうか?
また、そもそもこの米国債金利とは世界経済に対してどんな影響を持っているのかを今回は解説していきたいと思っております。
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事の発端はコロナショック
現在までに続く金利の推移を説明しようとすると2020年2月末のコロナショックまで遡ります。
それまで順調に上り調子で来ていた米国経済もコロナという未知のウイルスにより経済活動が麻痺し大ダメージを受けました。
そこでFRB(連邦準備制度理事会:米国中央銀行)は経済を立て直すために金利を下げる政策をとります。
『金利』とは経済の役割的に『コスト』と言い換えることが出来ます。金利を下げると企業は資金の調達コストが下がるのです。
中央銀行は金利を下げることで企業に利益が残りやすくなるようにして経済にカンフル剤を打つことが出来ます。
※むしろ中央銀行は『金利を操作する』というこの一本で、経済を立て直したり、インフレを抑制したりしています。
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そしてインフレに・・・
FRBの金利を下げる政策と米国政府の補助金などで米国経済はなんとか立て直しが出来てきたのですが、世界中の工場封鎖などで今度は需要と供給のバランスが崩れて物価高に見舞われます。
さらに2022年2月ロシアがウクライナに侵攻を始めました。小麦など世界でも有数の農産国である2つの国が戦争を始めたことで更に物価高が進みます。
また米国では失業手当などが十分ありすぎて賃金上昇が進んでいました。賃金を多少上げても誰も来ない状況です(;^_^A。これもインフレを助長する非常に大きな一因でした。
インフレが進むと国民の大部分が生活に困窮するため早めに退治しなければいけません。しかもほっておくとインフレは経済活動によってどんどん進んでいくのです。
そこでFRBは2022年3月ごろから方針転換し、金利を上げる政策に変わりました。
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金利を上げたことで起こること
金利を上げると資金調達コストが増え、利益が残りにくくなります。当然、企業業績は悪化します。ゆえに株価は下がります。
経済的には良いことがないのですが、実はFRBは役割として『雇用の最大化』、『物価の安定』、『適切な長期金利』という3つの大きな使命を持っています。
この中の『物価の安定』を図る目的で金利を上げています。実はこのインフレを退治できるのは唯一、中央銀行にしかできないことなのです。
FRBのパウエル議長は『経済がどんなに悪化しようとも、絶対にインフレを抑える!!』という強いメッセージとともに過去に類を見ないほどの勢いで金利を上げていきました。
その効果はようやっと2023年になり指数にも表れ始め、現在、インフレも少し落ち着いてきている様子を見せている状況です。
しかしながら、ここで手綱を緩めるとまたインフレに逆戻りしてしまうかもしれないため、2023年9月のFOMCでは『まだ下げることを議論する時期ではない』というメッセージを出し、マーケットはそれに反応して金利が上昇しているというのが今の状況です。
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日本への影響は?
円安はまさに米国債金利上昇の影響が直撃しています。
債券市場は株式市場の3倍ほどの規模があり、米国債はそのなかでも一番発行されている債券です。世界規模で見ても信用力がとても高いのです。
そんな信用力のある米国債が金利4%なんです。10年持っていたらおよそドルベースで1.5倍くらいになります。
日本では銀行に預けていてもほとんど金利がつかないので、皆が円を売ってドルを買うという行動をしているのです!!!
すると2022年1月には1ドル110円ほどだったものが、2023年9月末では1ドル150円まで円安が進むことになりました。
ここでのポイントは『為替は金利の後でついてくる』ということです。
今からドル債券を買うのは円安すぎるので、もう少し円高になってからやろうかな、と考えがちですが、1ドル130円位になるころには米国債金利は既に落ちついた後になるでしょう。
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すべてはシナリオ通りに・・・
実は今回書いたことはコロナショックが起こって金利を下げるという方針が出されたころに投資家界隈では大まかなシナリオ、こうなるだろうみないな話は既に出来上がっていました。
露宇戦争も起こり、多少の時期のずれはあったとしてもすべてはFRBのシナリオ通りなのです。
ちなみに2023年9月のFOMC後のコンセンサスとして『年内にもう一回くらい利上げがありそうだね。金利が下がってくるのは…う~んだいたい来年の3月くらいじゃないかなぁ』みたいなシナリオです。※世界を揺るがす大事件があれば簡単にひっくり返りますので過信は禁物。
最後のまとめですが、『米国債金利』ってすごくないですか(◎_◎;)
これひとつで為替、株価、インフレ全てが操れてしまう、、、。
いわゆる先行指標みたいなものなので、資産運用に興味がある方は日々の金利動向をぜひチェックしてみてください。
永井教盟
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