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2021.05.07
失火ノ責任ニ関スル法律
近年では『失火責任』についてニュースで取り上げられることも多くなったのでご存知の方も多いかもしれません。
『失火責任法』は明治32年に制定された法律で、失火による火災では賠償する義務が発生しないことを定めています。
日本では木造住宅が多く、さらに敷地面積が狭いことから類焼による損害が大きいことが背景にありました。
類焼してしまった場合には火を出してしまった本人も財産を失っていることが多く、その状況下で他人の財物を賠償することは難しいためであると言われています。
逆を言うと、『自分の家は自分で火災保険に入って守らないといけない』ということになります。
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『失火』とは?
この法律ではあくまでも『失火』によるものが損害賠償する義務がないとされています。
『失火』とは『過失によって火災を起こす事』です。
ちょっとわかりにくいので『失火』ではない場合を見ていくと、それは『故意(放火)』や『重大な過失』と言われるものになります。
『故意(放火)』や『重大な過失』は『失火』ではないので賠償する責任が発生します。
また、これらは火災保険の免責事項に該当することも多いのでご自身が加入した火災保険も出ないケースがほとんどです。
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『重大な過失』の主な事例
〇天ぷら火災
・天ぷらを作ろうとしていたが来客があり台所を離れた。油を入れた鍋は加熱したままだったため引火。
〇室内
・家のリビングでBBQを行った。
・虫をガスバーナーで駆除しようとした。
・石油ストーブのそばに蓋のない容器に入ったガソリンを置いていた。
〇たばこ
・灰皿がいっぱいになっていたが、そのままにしており寝たばこで引火した。
・たばこの火を消さずに庭に捨てた。
・ガソリンスタンドでたばこを吸った。
※個別の事案により法律上の判断が異なる場合があります。
『重大な過失』とは『ある状態を放置しておいたら誰が見ても危ないのに、それを放っておいた結果、火災が起きたケース』です。
安易な判断が重大な火災を起こすことがあるのでくれぐれもご注意ください。
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類焼の損害を補償する保険
各保険会社では近隣へ類焼させてしまった場合に使える保険として『類焼損害補償特約』を火災保険の特約として販売しています。
近隣の方が契約している火災保険の方が優先されるため必ず使えるものではありませんが、補償額が不足していた場合に使うことが出来ます。
民法上は賠償義務がないとはいえ、類焼させてしまった事により引越しを考える方も多かったようで開発された経緯があります。
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賃貸物件にお住まいの方は注意!
『失火責任法』は上記のような『不法行為責任』は免れますが『債務不履行責任』については何も規定されていません。
ここでいう『債務不履行責任』とは大家さんに対する借りた人の『保管義務と返還義務』です。
要は『失火であっても元通りにして返してね(-ω-)/』ということです。
そのためアパートなどを借りる際には賃貸管理会社が借りる人に対して火災保険に『借家人賠償責任保険』を付帯して契約を勧めるのです。
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上記は民法の話が基になっていますが、法治国家である日本では国民生活が円滑にまわるように様々な法律で成り立っています。
私もほんの一部しか知りませんが、その成立された背景なども気にしてみるとちょっと面白いかもしれません。
永井教盟
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