コラム
世界情勢
2022.07.08
130円代定着か?
円安はどこまで進む?
ここ数か月間での円急落により、為替について皆様の関心も高いようで、よく質問されます。
『ここまで急激に円安が進んだから、またすぐ120円くらいまで戻るんじゃない?』
『まだまだ150円までいくんじゃない?』
など意見は様々ですが『少し円高に戻るんじゃない?』という意見の方が多いように感じます。
では、今後の円相場、どうなるのかというと・・・わかりません(;^_^A
為替相場は株式相場以上に読みづらく、政治情勢など様々な事象が絡まってくるので予測は出来ないのです。
ただ、これだけでは皆様に満足して頂けないと思うので現状の再確認をしておこうと思います(-ω-)/
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どこまでさかのぼるか困るところですが、『コロナショック』くらいから始めましょうか。。。
2020年、コロナショックで経済が冷え込むことを懸念した各国は金融緩和政策(金利引き下げ)や経済支援策を実行し市場にお金をバラまきました。
そのおかげで株価は急激に回復し経済も復調していきます。
2021年も順調に経済は伸びていったのですが、コロナの影響で製造が出来ない物(半導体など)もあり、次第に需要と供給のバランスは崩れていきます。
『需要はあるのに供給できない』という事で物価が上がっていきます。バラまいたおかげでお金余りの状況がさらに拍車を掛けます。
また米国では十分な失業補償があったおかげで働き手が少なくなり、賃金を上げないと人手が雇えないという『賃金インフレ』も起こり始めました。
経済は順調に回復したのですが、歴史的な物価高が起こってしまったのです。
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この『賃金インフレを伴う物価高』はしつこい物価高になりやすく、早く退治をしなければならないと考えた米国の中央銀行であるFRBは金融緩和政策から金融引締政策(金利引き上げ)への変更に踏み切ります。
このような状況の中、2022年2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻し戦争が勃発しました。
資源国であるロシアが当事国になり原油などの高騰が始まり、さらに物価が上がる状況になってしまいました。
またウクライナは世界有数の小麦の輸出大国でもありました。これも物価高要因になりました。
こんな状況なので現在はなかなか物価高が収まらないのです。
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ちなみに中央銀行は金利を上げたり下げたりして金融政策を行います。
金利を引き上げると会社や個人は資金調達がしづらくなり、次第に消費が減っていきます。
するとモノやサービスの売れ行きが鈍り、雇用にも影響を及ぼし始めます(賃金カット、リストラ等)。
現在の米国FRBは『経済、雇用』を犠牲にしてでも、どうしても『物価高を抑え込みたい』ので金利を上げているのです。
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反対に日本は政策的には金融緩和(金利引き下げ)を継続しています。
すると米国の高い金利に魅力を感じる人は円を売ってドルを買うようになります。これにより円安はどんどん進行していきました。
こうして円安が進行していく中で、日銀が発表したのが『日本国債の無制限買取』でした。
各国の情勢に合わせて日本の国債金利もすこしずつ上がってきていたのですが、それを食い止めるために日本がとった政策が『金利を0.25%以上にしないために国債をどれだけでも買い入れる』と言うものでした。
債券の金利は買われると低下するという性質を利用したものです。
日銀が日本国債を買い入れると、その分、円が市場に出回ることになりますが、これはさらなる円安要因になります。
『日本は円安を容認した。』
世界中にそのメッセージが発せられているのです。
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為替がここまで動くと『協調介入して円高に戻せば良いじゃん』というお声もあるようですが、これは『協調介入』という言葉の通り、各国が協調しないと行えません。
米国は『経済、雇用が犠牲になっても断固として物価高を抑える政策』を行っている最中です。
さらに現在の『ドル高』は物価高を抑えるのに好都合なのです。
ここで日本が『ちょっと円安が行き過ぎてやしませんか?協調介入しましょう!』と持ち掛けて、米国様に応じてもらえるでしょうか?
日本は円安容認政策を絶賛実行中なのです。
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という事で長くなりましたが、私は円高になる要素が見当たらないなと感じているところであります。
しかしながら、新型コロナウィルス、ウクライナ戦争、誰が予想できたでしょうか?
何が起こるか分かりません。
もしかしたら急転して来週にでも為替の協調介入が入り120円に逆戻りするかもしれません。
だからこそ、質問の回答は『わかりません(;^_^A』なのです。
永井教盟
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